::Re:mem:ber:: k










家を出てから少し歩いてみたが、よく考えるとカカシを捜す為だけに里を一周するのはもの凄く面倒な事に気付いた

は、里を一望出来る場所に立っていた。

たかが人捜しのために歴代の火影の頭上に登るとは前代未聞だ。少し悪いと思っていても、九尾狐を赤子に封印した

奴なんかにあまり情なんて湧かない。しかし、自分はそれと変わらないことをは知っていた。否、比較になんてならな

い程、自分の方が何倍も愚かだ。

先代の火影は命を捨てても里の大勢の人間を護ったのに、自分はたった一人の子供さえ護れず、のうのうと生きてい

る。そんな事を考えたら、もう人捜しなんて気分は無くなる。ここを降りようと意を決すると、それよりも上の方で「上忍、

上忍」と呼ぶ声がした。



「あぁ、やっぱり来たんだね、カボス先生。昔から馬鹿と煙は高い所が好きと云うからねェ!」

「それじゃあ君も俺と同様ってコトね。それより、いけないんだ〜先代の頭、踏み荒らしちゃ」



売り言葉に買い言葉とはこの事だ。互いに厭味を云い合っているのに、どちらも恍けた顔は変わらない。これだから

いつまでも平行線で、話なんて進みはしないのだ。



「そうだ、ハム先生!私は君に用があったのだ!」

「なぁに?俺の事捜す為に先代の頭乗っちゃったワケ?はぁー、やっぱモテる男は罪だ」

「そうだなぁ。君はメンマ君ととてもお似合いだ!」



メンマ君?……それってラーメンにのってるやつ適当に云っただけじゃん。ナルトだ、ナルト!!

と、今回ばかりは呆れ果ててしまったカカシは、やっと火影の頭から降り自分の隣までよじ登ってきた上忍を横目で

ちらりと見た。ナルトと云えば、昨日“雨宿りの術”にすっかり取り込まれてしまった、可哀相な自分の生徒だ。

――雨宿りの術……か。

何度聞いてもナンセンスな命名だ。雨が降る訳でもなく、自分を雲で囲い雷で威嚇する気持ち悪い術。正にそれが

“雨宿り”となってしまうから、とても彼女らしい名付け方でもあるのだが。

あの任務での事を忘れる事はないのだろう。

もう、こんな悲しい涙は流したくない。術は彼女の馬鹿さ加減を代弁している様に見えて、本当は心の傷を晒している

のだ。大衆に向かって笑ってくれと云わんばかりに。

けれど、それが真実なのだろうか?もっと違うところに根本がある予感はしているのに、はっきりと云い当てる事が出

来ない。それ程彼女はカカシから遠い存在となってしまっていた。

こんなに空気は軽いのに、カカシの中は沈む様に重い。



「ねぇ、ハト先生。今君と戦ったらどちらが勝つかなぁ。」

「さぁー。やってみなきゃ判らないじゃない?」



突拍子の無いの質問にいつもの通り返してみるが、彼女の反応に「あぁ」と後悔する。

余程カカシの発言が嬉しかったのか、は足を上げ軽く彼を蹴ろうとした。が、その足はがしりともう一人の上忍に掴

れ、は片足でけんけんする。

別に自分は提案した訳ではないのだけど、返ってくる言葉は判っていた。



「カラシ先生よ、別に私は先駆けした訳じゃない!」

「わかってるよ。けどお前………俺の顔狙ったろ?この素敵な顔を………」



カカシが彼女の足を放したのが合図となり、二人は間合いを取った。

あちら側で終始阿呆面の人物が忌々しい。手を出せば足が返ってくるし、足を出せば思わぬところから手が出てくる。

何て気持ち悪い戦いなんだろう。

体術のみで確かな感触はあるというのに、まるで虚像と争っている様だ。受ける攻撃総てが自分と重なり、カカシの

中でいたちごっこがはじまる。

いったいどちらが本物だ?

動きが鈍った体にぶつぶつと冷や汗が滲んだその時、カカシの世界は九十度回転し、背中や頭を下に打ち付けた。



「何をボーっとしているのだ、このサルが!君がそんなんじゃひとつも楽しくない!」



カカシの腹の上で胡坐を掻き、怒っているのかどうなのか判別し難い顔をしては怒鳴っている。その間も周りの景

色がどんどん小さくなって、カカシの視野はピンポン玉の様に狭く、丸くなった。遠くで上忍の声が永遠と流れている。

とても長く感じられていたその間は実際数秒にしかなっておらず、カカシが我を取り戻した頃にはまだは叫び続け

ていた。



「ナガト君もまったく可哀相な生徒だ!才能が有り乍らも君の様なドカン上忍の下に居なければならないのだからな!」

「あぁ……悪かった」



なんとか笑顔で流してみても、なんとなく後味が悪かった。プレッシャーを感じているカカシをは知らない。

常に他人の地雷ばかり踏み荒らしているにとって、どれを避けて通らなきゃいけないなんて、見分けるモラルは無

いのだ。だからと云って、突っ込みと云う修正を入れられるのが好きな訳でもない。つまり言いたい事は云ってしまう

タイプなのだ。だから、しつこい。



「本当に悪いと思っているのか、君は!最後にそのガボーンな顔をおもいきり殴ろうと思っていたと云うのに!殴る価

値もない顔だな!!」

「………最後って……なんだ?」



の言葉にカカシは硬直する。“自分を越える”とはいったい何だ?先程の記憶から更にどんどんと遡り、彼女とは

じめて出会った時まで行きついた。

小さな背中、そこから生える長い手足は雨に濡れていて、悲愴さを増すだけの彼女に「上忍になれ」と云った。

その時ぴくりと動いた体。表情は読み取れなかった。



――……あなたは誰なんですか?

――はたけカカシ。木の葉の上忍だ

――上忍……はたけ…カカシ。………嫌な名前だ。



それ以来、彼女が上忍になるまで逢う事はなかったが、「やぁ、カス先生。久し振りだ!」と云った瞬間、それがあの

時の中忍――である事はすぐに判断出来た。

そうしてその時思った事。殺気が他とは全く違う。まるで皆無だった。

けれど、自分は異常に彼女を恐れていたのだ。それは自分に降りかかる害などではなく、彼女自身が破壊的だった。

自己壊滅……今ではそう一口に云える問題ではない。

凡てを救う気で、救えないと知った自分を崩壊させようとしているのだ!

カカシはもう、嫌になった。あの“雨宿りの術”とは本当は何とも関係無い。唯単に……無邪気だったのだ。

そうした途端、カカシは腹に居るをおもいきり蹴り上げ、転倒した上忍に覆い被さる様に両手を拘束した。

「驚いた」と云っていても顔に現さないに苛々が募り、カカシは口元の黒布を下げ乱暴にへ唇を押し当てた。一

時もこの人間の変化を見落とさぬ様、片目を開けてを凝視している。

だが彼女はぴくりとも動かない。舌を大きくして喉奥までねっとりと口内に這わせてみても、力も入れないし表情も変

えない。唇を舐められ、出し入れするその唾液の音にも何の反応もなかった。

カカシも意地になり、今度は唇をの頬から首筋へ移動させた。



ピィー ひゃららららら


空にトンビが飛んでいる。はずっとそれだけを見ていた。

いつまでも子供なのだ。

カカシはここに居る人間を自分だと思いたくなくて、はこうしている人間に追いつかなきゃいけないと思っている。



「もうやめないか?」



はトンビを目で追い乍らそう云った。

くるくると同じところを何度も回っている。きっと獲物を探しているのだ。






















カカシ先生はなんて云うか……最初見た時インパクト強すぎました。
あの頭はなんだ!!(笑笑  みたいな……。
カカシせんせファンの方、どうか怒らないで下さい!!
私はカカシの頭がド・ツボなんです!!(爆爆 =逃亡
まだまだ続きます(汗




次読むよ。


ブラザを閉じてお戻り下さい。。